~入試直前期の過ごし方と保護者の心構えが入試結果を左右する~
本格的な冬の訪れとともに、中学入試が目前に迫ってきました。
1月校の出願を終え、いよいよ入試シーズンの幕が上がる時期です。
中学受験が初めてというご家庭では、期待と同時に不安も大きくなりがちです。
この直前期は、これまで積み上げてきた努力を「合格」という成果に結びつける最終調整の期間です。学習面での得点力の安定に加え、精神面のケアが結果を左右する重要局面であり、その主役となるのは保護者の関わり方です。
今回は、「学習マネジメント」と「メンタルケア」の両面から、直前期に押さえるべき視点を整理していきます。
「積み上げる」から「まとめる」学習への明確な転換を
これまでの半年間は、多くのご家庭が“詰め込み”型で学習内容を増やす「積み上げる学習」を中心に進めてきたことと思います。しかし入試直前期は、この姿勢を「まとめる学習」へと切り替えるタイミングです。
すなわち、
新しい知識を広げるよりも、「使える知識として整理する」段階に入ります。
特に意識しておきたい3つのポイントは以下の通りです。
- 時間配分を意識したトレーニングを行う
- 過去問分析ノート・解き直しノートの再点検を徹底する
- 複数単元にまたがる弱点(図形と比、速さと割合など)を横断的に整理する
直前期の得点力向上の本質は「できる問題を確実に得点化する」ことに尽きます。未知の問題に手を広げるより、既習内容を入試用にブラッシュアップしていくのが最も効率的です。
学習スケジュールは“固定”ではなく“循環”型に
直前期に多い失敗の1つが、「やるべきことが多過ぎて消化し切れない」状態に陥ることです。
この時期は、予定を詰め込みすぎず、“循環型”の学習サイクルを組むことが効果的です。
たとえば次のようなモデルケースが挙げられます。
| 週 | 内容 | 目的 |
|---|---|---|
| 第1週 | 苦手単元の総復習 | 抜けの補強 |
| 第2週 | 過去問2年分+見直し | 実戦感覚の再構築 |
| 第3週 | よく出るテーマの反復 | 得点安定化 |
| 第4週 | ノート・メモ整理/総仕上げ | 自信の最終確認 |
100%仕上げるのではなく“70%仕上げて回す”ことがむしろ精度アップにつながる——これが直前期スケジューリングの鉄則です。
過去問は「入試を模擬体験する教材」として活用する
直前期の過去問演習は「実力確認」だけでなく、入試本番のシミュレーションとして活用すべきです。
たとえば、
- 起床時間・食事時間を本番仕様にして演習する
- 試験開始時刻・休憩時間も入試当日と同じ流れにする
といった形で “当日の行動をそっくり再現する” 意識が重要です。
単に正答率を見るのではなく、
「時間配分」「見直しの質」「集中の持続」といった行動のプロセスを評価し、改善していきましょう。
心の揺れは“正常な反応”

入試直前期には、受験生の心の揺れが大きくなるのは自然な現象です。真剣に取り組んできたからこそ不安が生じるのです。
このタイミングで保護者が意識すべきは、過剰に励ますのではなく、“どっしりと受け止める姿勢”です。
心を落ち着かせる言葉として有効なのは、次のようなものです。
- 「不安なのはみんな同じだよ。普通のことだよ。」
- 「今までの努力はちゃんと積み上がっているよ。」
- 「焦らなくていい。できることを丁寧にやろう。」
安心感のある“受け止める言葉”こそ、受験生の心を安定させます。
家庭の「雰囲気の安定」が合否を左右する
入試直前期において最も重要なのは、家庭の雰囲気です。
保護者の表情や口調の変化は、受験生にそのまま反映されます。
特に意識したいポイントは以下の3つ。
- 過去問の得点に一喜一憂しない
- 点数ではなく“取り組み姿勢”を評価する
- 食事・睡眠のリズムを安定させる
また、睡眠不足は判断力の低下に直結するため、夜遅くまでの勉強は避け、生活リズムを整えることが保護者の大切な役割です。
保護者の動揺は受験生に“確実に”伝わる
入試結果が出る直前・直後は、実は受験生以上に保護者の心が揺れやすい時期です。
模試の数字や周囲の情報に振り回されると、不安が受験生にも伝わり、悪循環を生んでしまいます。
保護者の動揺は受験生に“確実に”伝わります。
そして保護者の顔色を見て勉強する(行動する)といった最悪の循環をもたらしかねません。
特に重要なのは、不調な結果のあと、次の試験へ向けて前向きに気持ちを切り替えさせる支えを保護者が担うことです。
慌てているときこそ落ち着いて、どっしりとした親の姿を見ることや言葉を聞くことで、受験生がネガティブな負のスパイラルから脱却できます。
本番直前は、
不得意科目を詰めるより、むしろ“得意科目に触れて気持ちを上向かせる”方が成功率が高い
ということも知っておくとよいでしょう。
おしまいに――“明るい12の春”に向けて

直前期は、受験生が最も不安になりやすい局面であり、同時に努力が最も成果に変わりやすい時期でもあります。
これまで積み重ねてきた時間を信じ、そして何より、
保護者が子どもを温かく包み込む姿勢
こそが、入試本番で最大のパフォーマンスを引き出します。あとひと踏ん張り。
明るい12の春を迎えるために、最後までしっかりとサポートしていきましょう。